中原宣孝 なかはらのぶたか
Nakahara Nobutaka
具象を抽象として視ること
2012年 03月 18日 (日) 00:00 | 編集
『 ヨーロッパ版画の巨人たち 』 / 2012.02.03~03.11 / 北海道立近代美術館

版画(printing)を印刷(プリント)ではなく、直に肉眼で観ることの大切さをあらためて感じさせられる。
案内リーフの表紙を飾っているレンブラントの作品は、唯一その1点のみ。
他にデューラーやウイリアム・ブレイク、コロー、ミレー、ドーミエ、マックス・クリンガーの作品は見応えがある。
特にドーミエの8点のリトグラフ作品は、その現実を鋭く切り取ったテーマ性とともに、構図や明暗のダイナミックな用い方が素晴らしい。

私の 『 絵画論 』 から
「具象を抽象として視ることなくして、色や形のバランスを正しく判断することはできない」

光と闇のあいだにしか生まれない
2011年 03月 13日 (日) 12:00 | 編集
『 守分美佳展 』 / 2011.03.02~03.20 / GALLERY MIYASHITA

守分さんは抽象表現の世界を追及し続けている。

作品はいずれもパネルを支持体に、
凹凸の激しいマチエールが施された上に限られた色数で彩色されている。

そのマチエールは特にクレヨンで描画された部分で、
下層の色と強いコントラストを形成することに効果を発揮している。

不思議なことにその部分は、場所によって実際より5ミリくらい浮き出て見える。

今回は初めて白と黒を使ったという。

その白や黒に隣接した色は、その色を単独で認識した場合よりも一層、
その色の本質を浮かび上がらせている。

ゲーテの言葉が思い出される。

「現象する色は光と闇のあいだにしか生まれない」
(JOHANN WOLFGANG VON GOETHE / 1749 - 1832)

カタルシスを感じられるような
2010年 10月 02日 (土) 20:25 | 編集
『 長島明子陶展 』 / 2010.09.25~10.03

‐手付のうつわ‐という副題のある陶芸作品展。
作者の明確で清潔な世界観を映した、
必要最小限の差異というフィールドの上で繰り返された反復のような、
そして時にはそこに食材が付加されされることで繰り返し完成され続ける、
「用いることのできる彫刻作品」のようでありました。

■ 装飾性を抑えたシンプルな形態の美しさ.
■ 最小限の色数による心地よいコントラスト.
■ ミニマルな抽象絵画を髣髴させる上品な艶のある陶の肌.

とても確かなメチエによるストイックそうな造形表現ですが、
画家でもある長島さんは陶芸作品の場合はとても楽しんで作っているのだそうです。
眺めていても、使ってみても、生活空間にあるだけでカタルシスを感じられるような作品です。

絵にとって額は服のようなもの
2010年 08月 01日 (日) 21:56 | 編集
『 山下かさね展 』 / 2010.07.26~07.31 / 札幌時計台ギャラリー

寒暖の変化から快適に過ごすために、
よりよく装うために、
人は服を着る。

絵にとって額は服のようなもの。
だけど、それは諸刃の剣、パルマコン。
作品にとって「額に負けてしまうこと」は最大の悲劇だ。

水彩画による個展。
どの作品も額装されていなくて、ピンで壁に留められている。
作品を前にして、不思議とそれが気にならない。
作品の不思議な魅力にひき込まれてしまうからか。

■ モチーフの多様さ.
  作家の、世界に対する視点の豊かさ。

■ アポリアな線描.
  普通ならあり得ない、主観性と誠実さが両立している。

■丁寧な彩色.
  微妙な色相の揺らぎをともなった一筆一筆で構築された畳など。

■テーマに応じた空間表現.
  正確な一点透視図法で描かれた作品や、
  机の上のペンが真上から描かれた人物画の多視点的作品。

■ 平面的な空間処理.
  ルネサンス時代までの作品を念頭に置いて述べられたであろう、
  「絵画」をディフィニションした次の言葉は、
  不思議と山下さんの作品にも当てはまる。

「板とか壁とか画布とかの表面において、適切な素描力によって形象を取り囲む輪郭線の周りが、
色彩の拡がりに覆われた平面である」
(GIORGIO VASARI / 1551 - 1574)

なにもないところにすべてがある
2010年 07月 20日 (火) 11:07 | 編集
『 柳田昭展 』 / 2010.07.12~07.17 / 札幌時計台ギャラリー

一見して何気ない風景や静物なのですが、
落ち着いた世界の中に品格がありました。

■ 構図の美しさ.
■ シャープさを抑えた的確なコントラスト.

19世紀のイギリスの風景画家の言葉が浮かんできます。

「なにもないところにすべてがある。自然には醜いものなどない。忠実に描けば描くほどいっそう高貴なものとなる。」
(JOHN CONSTABLE / 1776 - 1837)

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